血管性認知症
認知症状態になる病気のうち、約20%を占めるとされます。
脳梗塞や脳出血など、脳血管の障害で起きる認知症のことを指します。
脳梗塞では、脳の血管が詰まって血流が悪くなり、その周りの神経細胞が死んでしまいます。
脳出血では、脳血管が破れることで出血し、周辺の神経細胞がダメージを受けます。
これらによって、認知症の症状や麻痺などの神経症状が出てくるようになります。
アルツハイマー型認知症は徐々に脳が痩せていくので、症状も徐々に進んでいく傾向にあります。一方で、血管性認知症の場合は脳梗塞や脳出血などによるダメージが起きるたびに症状が強まりますので、徐々にというよりも階段状に症状が進んでいくことが多いです。
ダメージを受ける部位によって症状が異なりますが、小さな脳梗塞がたくさん積み重なって起こる場合もあれば、認知機能にとって重要な部位に小さなダメージが起こることだけで認知症になってしまう場合もあります。
血管性認知症の症状
(1)認知機能の障害
先述の通り、ダメージを受けた脳の部分による症状がみられますので、認知機能が全般的に低下するよりも、一部は障害されて、その他の部分は保たれているという状態が典型的です(まだら認知症)。
(2)BPSD(周辺症状)
意欲や自発性が低下して、ボーッと過ごす様子が見られることがあります。一方で感情の起伏が激しくなって、急に怒ったり泣いたりすることも目立つようになります(感情失禁)。
精神的な症状は動揺しやすく、夜間に興奮したり、せん妄(一種の錯乱状態)、行動異常が起こることもあります。
(3)身体症状
ダメージを受けた脳の部分によって、麻痺が出たり、感覚の異常が出たり、言葉がうまく話せなくなったりすることがあります。
パーキンソン病のような症状が出ることもあります。また、頻尿や尿失禁などもしばしば認められます。
検査
脳のダメージがどこにあるのかを確認するために、脳の形態を調べる頭部CTやMRI、また血流の状態を調べるSPECTやPETなどの検査があります。
治療
脳に起きたダメージを元に戻す方法が残念ながら難しいため、治療というよりも予防が大切になります。
血管性認知症の危険因子として、高血圧、糖尿病、心房細動、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)、肥満、脂質異常症、喫煙、飲酒などが挙げられています。これらの治療や予防をすることで、ひいては血管性認知症を予防することにつながります。
内科的な治療を受けて、必要なお薬を続けたり、喫煙や飲酒などの習慣を改めることが必要です。
また、生活の能力が低下したり寝たきりになったりすることで脳循環や代謝が低くなってしまい、認知症が進んでしまう可能性があるので、脳梗塞などが起きても早期からリハビリテーションを実施し、寝たきりにさせないようにしていくことも重要です。