月経前不快気分障害(PMDD)
女性の月経周期の時期によって、気分の不安定さや不安などが悪化したり良くなったりを繰り返す疾患と言えます。うつ病の一種と考えられています。
月経周期とは
月経が始まった日から次の月経が始まる前日までの日数を、月経周期といいます。
だいたい25~38日くらいで、もっと短い人もいれば長い人もいます。
この経過の間、脳下垂体や卵巣からでる複数のホルモンが関わっています。
■月経周期は以下のような流れになります。
脳下垂体からFSHが分泌
→卵巣の中の卵胞が成長し始める
→発育した卵胞から卵胞ホルモンが分泌、子宮内膜が厚くなっていく
→卵胞ホルモンの分泌がピークになると、脳下垂体からLHが分泌
→卵胞が刺激され、排卵
→卵子が出て行った卵胞が黄体に変化し、黄体ホルモンが分泌
→黄体ホルモンの刺激で、子宮内膜が妊娠できる準備をする
→受精がないとホルモン量が激減し、内膜が剥がれおちる(月経)
脳から出るホルモンで卵巣が反応し、卵巣からのホルモンで子宮内膜に変化が起こり、また卵巣からのホルモンを脳がキャッチしてまた脳からホルモンが出て、卵巣や子宮内膜に変化をもたらすという流れです。
どのような症状がみられる?
月経前不快気分障害(PMDD)では、感情面と身体/行動面の症状がいくつも合わさって認められます。
そして、これらの症状が月経前に限定して出現することがこの疾患の特徴です。
つまり、月経が開始すれば症状はゼロかほとんどなくなるところまで改善するということです。
■感情面の症状としては、以下のうちいくつか必ず見られます。
- 著しく不安定な気分(例:急に悲しくなる、涙もろい、拒絶されることへ敏感になるなど)
- 著しくいらいらする、怒りっぽくなる、対人関係で摩擦が増える
- 著しく気分が落ち込む、絶望的になる、自分を責めてしまう
- 著しく不安や緊張を感じる、高ぶっているとかいらだっているという感覚
■さらに、身体/行動の症状として以下のようなものを伴うことがあります。
- 普段の活動をしたいと思わなくなる
- 集中しづらいと感じる
- 倦怠感や疲労感がかなり強くなる
- 食欲が大きく変化する(過食、特定のものを無性に食べたくなる)
- 眠れない、または寝すぎてしまう
- コントロールできないという感覚
- 乳房の圧痛や腫れ、関節痛や筋肉痛、体重増加、「膨らんでいる」感覚
上記のような症状が複数以上、ほとんどの月経周期でみられます。
そして、そのために非常に苦痛が強かったり、仕事や学校、社会的な生活な日常生活で大きな支障をきたしてしまいます。
たとえば、仕事ができなくなる、休んでしまう、学校に行けない、家庭でも家事ができない、などです。
また、夫婦間の不和や、子供や他の家族、友人との問題という形で現れることもあります。
頻度と特徴
月経のある女性のうち、有病率は1.8〜5.8%と言われています。
初潮の後、いつでも発症する可能性があるとされます。閉経後、症状は消失します。
月経前症候群(PMS)というものを耳にしたことのある方もおられると思います。
PMSでも月経前に症状が出てくるのですが、上記のPMDDの症状がそれほどたくさん出てくるわけではなく、感情の症状も必ずしも認めるわけではありません。
つまり、PMSはより軽度であると一般的には考えられています。
月経困難症というのもありますが、これは月経開始とともに始まる症状なので、PMDDとは全く別ものと言えます。
また、症状は苦痛を伴う月経なので、感情の症状を伴うPMDDとは区別されます。
治療
抗うつ薬のひとつであるSSRIを用いた薬物治療があげられます。
黄体期のみに服用する方法、一部の方は継続的に服用する方法がとられる場合もあります。
医師とよく相談して治療を進めると良いでしょう。