限局性恐怖症
限られた特定の対象や状況に対して、強い恐怖を感じ、不安が大きくなる疾患のことです。
高所恐怖症などと日常でも言われることがありますね。
どんな状況で起こるのか?
「恐怖刺激」という、特定の状況や対象が存在する場面に限って不安や恐怖が起こります。
この刺激の対象は、以下のように分類されています(DSM-5)。
・動物
例)クモ、虫、犬、など
・自然環境
例)高所、嵐、水、など
・血液・注射・負傷
例)血液を見ること、注射針、痛みを伴うような医療処置、など
・状況
例)航空機、エレベーター、閉所、など
・その他
例)窒息や嘔吐につながる状況、(子供では)大きな音や着ぐるみ、など
感覚的におわかりのように、ひとりの人がひとつだけ恐怖するわけではなく、上記のうちの複数の対象や状況で恐怖を感じることはよくあります。
どんな症状がみられる?
先の恐怖刺激にさらされた時、ほとんどいつも、即時に恐怖を感じます。たまに感じることがあるというものではありません。そして、この疾患の患者さんが感じる恐怖は、一般の人が感じる恐怖よりもはるかに強烈で重度のものであるとされます。「ちょっと怖いかも」という程度ではなく、通常考えられる以上に不釣り合いな恐怖ということですね。
恐怖の強さは、その恐怖刺激にどれだけ近いか?によって変動します。例えば、恐怖を感じるヘビが10m先にいる時と、手に届くところにいるときでは、明らかに後者の方が恐怖が強まるでしょう。また、ヘビが実際にその場にいる場合はもちろんですが、その対象を予期するだけでも恐怖することもあります。そして、その恐怖としてパニック発作が起こることもあります。
限局性恐怖症の方はその恐怖刺激を回避しようとします。たとえば、高所恐怖症の人なら通勤のために橋を渡らずトンネルと通る経路を選択する、飛行機恐怖の人であれば海外出張を命じられてもどうしても行けず断ってしまうくらいでしょう。もし回避できない状況なら、恐怖や不安を必死に耐え忍ぶことになります。
頻度や特徴
アジアでは2〜4%の方がこの疾患をお持ちだと言われています。年齢が高くなると有病率は低くなると言われています。また、動物とか自然環境、状況の限局性恐怖症は圧倒的に女性に多いのですが、血液・注射・負傷によるものは男女で差がないとされます。
この疾患に至る前に、心理的にトラウマになるような出来事を経験したり、目撃したり、そのような情報を耳にしたなどのきっかけがあったという方もおられますが、多くの方は特定の理由を思い出せないようです。
治療
治療の目標は、恐怖の対象や状況を取り除き、社会機能の障害を改善することです。たとえば、飛行機恐怖の方なら、飛行機で海外に行けるようにすることです。
この目標のためには、暴露療法という治療が行われます。簡単にいうと、恐れている状況から回避せずに慣れていくという治療法です。飛行機恐怖の方の例なら、いきなり国際線は無理ですので、まず空港に行くことから始めるなど、小さなステップから徐々に段階を上げて行くようにします。不安が強まるなら、抗不安薬を使うこともあります。