パニック症(パニック障害)
この疾患を理解するために、パニック発作をまず説明したいと思います。
パニック発作とは
突然、激しい恐怖や強烈な不快感が急激に高まり、数分以内でピークに達し、その間に下記のような様々な症状がいくつも出てくる状態を言います。
- 胸部の症状:動悸、心拍数の増加、胸の痛みや不快感
- 呼吸の症状:息苦しさや息切れ、窒息感
- 腹部の症状:吐き気、腹部の不快感
- 全身の症状:冷や汗、ふるえる、寒気や熱感、しびれやうずき、めまいや気が遠くなる感じ
- 精神の症状:現実感がなくなる・もう一人の自分を外から見ている感覚、どうにかなってしまいそうなことへの恐怖、死ぬのではないかという恐怖
このような症状が、平穏な状態であったり、もしくは不安を感じている状態から一気に高まるのがパニック発作です。ちょっとした不安という程度ではないのがお分かりだと思います。このパニック発作ですが、パニック症だけでなく他のいろいろな精神疾患でも起こる可能性があります。「パニック発作」=「パニック症(パニック障害)」ではないことをご理解ください。
本題のパニック症(パニック障害)にうつります。
パニック症(パニック障害)とは
以下の両方を満たす場合に診断されます。
- 「予期しないパニック発作」を繰り返す
- 発作についての不安や恐怖が頭から離れなくなる「予期不安」を認める
注意したいのは、『予期しない』パニック発作を繰り返す、ということです。つまり、パニック発作がなんの前触れもなく、きっかけもなく、唐突に起こるということです。リラックスしている時に突然、起きます。数分以内でピークに達し、多くの場合は30分前後でおさまっていきます。予想しないタイミングで突然の強い不安症状が高まるので、とても恐怖に感じられます。
このパニック発作を繰り返すうちに、「また発作が起こるのではないか」と不安が頭から離れなくなってきます。これを「予期不安」と言います。繰り返すパニック発作に加え、この予期不安が出てくるのもパニック症(パニック障害)の特徴です。
また全員ではないのですが、「広場恐怖」という症状も伴う場合があります。これは、パニック発作が起きた場所、また発作が起きた時に簡単に逃げ出せないような場所を避けてしまい、結果として行動範囲が狭まる症状を指します。たとえば、電車や飛行機などの交通機関、じっとしていなければならない美容室や長い行列などを避けることにもつながります。特定の場所だけ避ける場合もあれば、極端に範囲が広がってほとんど外出できないひきこもりの状態になる場合もあります。
症状が起こる仕組み
人間には、脳の中に危険を察知して知らせるシステムが備わっています。なんらかの具体的な危機が迫った時、このシステムがアラームを鳴らし不安や恐怖を感じることで、その危機に対して準備するわけです。
ところが、パニック症(パニック障害)の方は、この危機察知システムが勝手に誤作動を起こしてしまいます。特に危機に直面していない場面で、いきなり誤作動のためにアラームが鳴り始めます。そうすると、理由もなくパニック発作が起こってしまうことになります。
このシステムには、ノルアドレナリンとかセロトニンとかいった物質が関与していると考えられています。ノルアドレナリンが過剰に出すぎてしまうと、パニック発作が出てしまうようです。また、セロトニンは不安をしずめてくれる作用がありますが、そのセロトニンが少なくなってしまうことで安定が保てなくなっているとも言われます。
治療
おくすりによる治療と、精神療法があります。
おくすりでは、セロトニンを増やすことで不安を小さくすることを狙ってSSRIという抗うつ薬の一種を使うことがあります。徐々に効果が出てくるお薬ですので、しばらく続ける必要があります。でもその間にパニック発作が頻発してつらい状況になることもあるため、抗不安薬というお薬を一時的に併用することもあります。こちらは依存性や耐性などの問題が生じることもありますので、医師の指示にしたがって服用するようにしましょう。
精神療法としては、認知行動療法や心理教育、自律訓練法などがあります。