認知症全般

誤解されている方も多いと思いますが、「認知症」とは正確には病気の名前ではありません。
あくまで、認知症という「状態」をさす言葉です。
そして、さまざまな病気によって、「認知症状態」になります。

では、「認知症」とは、どんな「状態」を言うのでしょうか。
年齢を重ねると、体が弱っていくように脳も弱っていきます。
これは生理的な現象なので病気ではありません。
しかし、認知症状態になりますと、下記のような症状がでてくるようになります。

認知症のメイン症状（中核症状）

記憶力の障害（すぐ忘れる、新しいことを覚えられない、さっきのことを思い出せない、など）
言葉の障害（言葉が出なくなる、理解できなくなる、単語の意味を忘れてしまう、など）
失行（衣類を着れない、使い方はわかっているのに物を使えない、など）
失認（見えているが認識できない、など）
実行機能の障害（段取りよく物事を計画できない、進められない。料理がうまくできない、など）
認知症になると、上記のようなさまざまな症状がみられるようになり、生活に大きな支障をきたします。
たとえば、物の置き場所を忘れて失くしてしまう、会話が流暢でも名詞が出てこないので内容が伝わりにくくなる、今まで問題なく使えた電化製品が使えない、顔見知りの人が誰だかわからない、主婦の方だと食事の献立を考えたり作ったりできない、などです。

認知症の方では以下のことが見られるため、正常老化とは異なります。
・体験したことそのものを忘れる
・だんだんと進行する
・判断力が低下する
・物忘れの自覚がない
・日常生活に支障をきたす

さらに、認知症の方にはこれら以外に心理面や行動面で症状が目立ってくることがあります。
先に書きました認知面の症状が中核症状であれば、この心理・行動面の症状はBPSDと呼ばれます。
そして、ご家族がこのBPSDに困ってしまうこともあります。

BPSDとは

・関心の低下
・やる気の低下
・うつ
・徘徊
・幻覚
・妄想
・興奮、怒りっぽさ
・粗暴な行動　など

最初に書きましたように、認知症は「状態」です。
では、その状態を起こす「病気」にはどのようなものがあるのでしょうか。

認知症を起こす病気

・アルツハイマー型認知症
・レビー小体型認知症
・血管性認知症
・前頭側頭型認知症
・正常圧水頭症
・慢性硬膜下血腫
・脳腫瘍
・甲状腺機能低下
・栄養障害
・薬物やアルコールに関連する認知症　など

このように、認知症を起こす病気にはたくさんの種類があります。
その中で、残念ながら今の医学では元に戻せない病気もあれば、治療すれば治せる病気もあります。
治せる病気なら、外科的な治療や内科的な治療で回復が望めます。
また今の医学では治療が難しい認知症でも、進行を遅らせることができるものもあります。
一方、BPSDについても環境調整やおくすりの治療で軽減することが可能です。

先述のように、認知症の方は記憶力や判断力などが低下してしまい、さらにこれまでできていたことがご自身ではできなくなります。
よって、生活していくために様々な援助が必要になってきます。
ご家族がご自宅で支えられることも多いですが、長く続く介護なので負担は大きいものです。
介護支援サービスを受けたり、地域包括支援センターで相談したりすることができます。
また、在宅での介護が困難になった場合には、グループホームや老人施設などの施設対応を依頼することも考えられます。
激しいBPSDなどで、施設対応すら困難な場合には、入院治療を要することもあるでしょう。
地域にはたくさんの支援策がありますので、相談されるのが良いと思います。

以上、認知症の全般的なお話を書いてみました。
代表的な認知症を引き起こす病気については、別立てでアップしていきます。