妄想性障害
名前にある通り、妄想を特徴とする障害のことをいいます。日常会話でも「妄想」という言葉を使うことがありますが、精神医学でいう妄想とは以下をさします。
妄想とは
「事実ではない」ことを、「確信」しており、「訂正ができない」。
この3つの条件を満たした時に、精神医学でいう妄想といいます。
症状
妄想性障害は、この「妄想」が長く続いてしまうことが特徴です。同じく妄想を主要な症状とする疾患に統合失調症がありますが、以下の点で異なります。
妄想性障害では幻聴などの幻覚が強いわけではなく、あったとしても妄想に関連する幻覚を認めるのみです。そして、統合失調症のように感情が鈍くなったり、意欲が大きく減退したりすることはありません。
このため、妄想以外の点では、日常生活に大きな支障は目立たず、普通に生活しているように見えることが多いのです。
これらの妄想を確信していることにより、社会上や結婚生活上、仕事の上などで問題が起こることがあります。
「自分の考えがおかしいと他者は思っている」と説明することはありますが、そのことを受け入れられません。
このため、多くの人は不機嫌でイライラしてしまいます。また、激怒したり暴力的な行動を起こしてしまう場合もあります。
確信していて訂正がきかないので、それが行動につながって訴訟とか敵対的な行動に出る方もおられます(たとえば、政府に抗議の手紙を何百通も送りつけるなど)。
妄想性障害のタイプ
妄想性障害は、妄想の内容によって以下のように分類されています(DSM-5)。
・被愛型:
ある人物が自分に対して恋愛感情を持っているという妄想
例)ある芸能人が私のことを愛しているのだ、と確信
・誇大型:
実際には認められない卓越した才能を持っている、重大な発見をしたなどと確信する妄想、
著名人と特別な関係にあるという妄想
例)自分が著名な人物である(実際の著名人は偽物だとされることがある)という妄想
・嫉妬型:
配偶者や恋人が浮気とか不倫をしていると確信する妄想
例)少し衣類が乱れているのを見て不倫していると考える、などと確信
・被害型:
嫌がらせや陰謀を企てられているなど、不当に被害を受けているという内容の妄想
例)隣人が大きな音を立てて自分に嫌がらせを続けている、などと確信
・身体型
自分の身体の機能や感覚にかかわる妄想
例)自分が悪臭を放ってしまっている、自分はとても醜い、などと確信
頻度や特徴
この障害は、0.2%ほどの方がかかると言われています。最もよくみられるのは上記の分類のうち被害型だとされます。
男性も女性も発症頻度に差はないと言われていますが、嫉妬型については男性の方が多いと考えられています。
若い方に見られることもありますが、高齢者により多く認められるようです。
先に述べましたように、統合失調症に比べると日常生活などへの影響は限定的だとされます。しかし、一部の方はのちに統合失調症を発症することがあります。
治療
妄想性障害は統合失調症と異なり、おくすりへの反応がよくないです。
また、ご本人は自身が病気にかかっているということを理解できない(認めない)ため、そもそも治療を受けようとしないこともあります。
周囲への影響が大きすぎる場合は、医師の判断で入院が必要になることもあります。
効果が悪いものの、おくすりを使いながら家族らのサポートを得て環境を整えていくことが必要でしょう。