広場恐怖症
この疾患では、さまざまな状況に実際に遭遇するとか、遭遇しそうだと予想されることがきっかけで、強い不安や恐怖が引き起こされてしまいます。
そして、その不安や恐怖が状況とは不釣り合いなほどに大きく感じられて苦痛を感じます。
どんな状況で起こるのか?
以下のような状況に分類されており、広場恐怖症ではそのうちの2つ以上で恐怖や不安が強くなるとされています。
・公共交通機関の利用
例)自動車、バス、列車、船、航空機などに乗ること
・広い場所にいること
例)駐車場、市場、橋など
・囲まれた場所にいること
例)お店、劇場、映画館など
・列に並ぶこと、人ごみの中にいること
例)行列に並んで順番待ちをする、都会の交差点など
・家の外に一人でいること
どんな症状がみられるか?
上記のような状況で強い恐怖や不安が出てしまいます。そして、そういう状況で何か恐ろしいことが起きるかもしれないと考えます。
たとえばパニック発作のような症状や、嘔吐や下痢などの症状、高齢者では転倒してしまうかもしれないなどですが、これらが起こった時にすぐに逃げられないとか、誰にも助けてもらえないと信じているため、このような状況を非常に恐れてしまい、回避しようとします。
症状の出る状況を通り過ぎようと気をそらそうとしたり、日課をかえたり、公共交通機関を利用しないで済む職場を選んだり、などと回避することによって生活の幅が狭くなってしまいます。
症状の重い人になると、家から出られなくなってしまうこともあります。
頻度や特徴
パニック症をもつ人の大多数は、パニック症を発症する前に広場恐怖症の症状が見られると言われています。
広場恐怖症を発症する平均年齢は17歳だとされます。全体の2/3が35歳前に発症しますが、40歳以降にも発症しやすい時期があるようです。
症状は慢性的に続くことが多く、他の不安症(不安障害)やうつ病性障害などと合併することもあります。
年齢層により恐怖する状況にも特徴があるようで、子どもは家の中で一人でいることを恐れることが最も多く、より高齢の方では店にいるとか列に並ぶ、囲いのない場所にいる状況を最も恐れるとされます。
また、子どもは迷子になってしまうと考えることが多く、成人ではパニック発作のような症状が起こるのではと恐れ、高齢者では転倒するのではと考えることが多いようです。
治療
治療の目標は、恐怖や回避をなくして、社会的な機能の障害を改善することです。つまり、電車を恐れる人は、電車に不安なく乗れるようになることだと言えます。
そのためにおくすりの治療として不安症(不安障害)に用いることのあるSSRIという抗うつ薬や、抗不安薬という種類のものを使用します。
もうひとつは認知行動療法という精神療法があります。これは考え方を変えることで行動を変え、また行動を変えることで考え方を変えていく方法です。
これらを併用して、最終的な目標を達成できるように治療していくと良いでしょう。