躁うつ病(双極性障害)
双極性感情障害とも言います。うつ状態と躁状態を繰り返す病気です。
それぞれ以下のような症状がみられます。
うつ状態の症状
抑うつ気分(気分の落ち込み)
意欲の低下(やる気が出ない、楽しかったはずのことが楽しめない)
思考力の低下(集中力が落ちた、決断や判断ができない、自分を責める、悪い方に考える)
不安や焦燥感(いつも不安がつきまとう、そわそわ落ち着かない)
睡眠障害(眠れない、寝すぎてしまう)
食欲の異常(食欲がない、美味しいと感じられない、過食)
疲労感(からだが重い、だるい、疲れがとれない)
性機能の問題(月経不順、性欲が落ちた、勃起不全)
その他(あちこちが痛い、便秘、動悸) など
躁状態の症状
気分が高まる(エネルギーに溢れ、元気になった気がする)
怒りっぽくなる(不機嫌でイライラする)
睡眠をとらなくても平気(睡眠時間が短くても疲れを感じない)
自尊心が大きくなる(偉くなったような気がする、なんでもできる気になる)
多弁(いつもよりおしゃべりになる)
注意が散漫(小さな刺激でもあちこちに注意が向いてしまう)
活動性の増加(いつも以上に色々と活動する)
まずい結果になることへの没頭(浪費、分別のつかない性的行為、過剰な投資など) など
上記の症状を、ある程度の期間ごとに繰り返してしまいます。「うつ状態」の時だけをみると、うつ病と区別はつかないのですが、過去についてよくお尋ねるすと「躁状態」の時期がある方もいらっしゃいます。このような場合に「双極性障害(躁うつ病)」と診断することになります。
少し細かく分けますと、双極性障害には「Ⅰ型」と「Ⅱ型」があります。「Ⅰ型」は、躁状態が極めて深刻で、入院を必要とするくらいのはっきりした症状があらわれます。また、これらの躁症状が一般的には1週間以上続くことになります。一方、「Ⅱ型」の場合には、躁症状がⅠ型ほど強くなく、続く時間もそれほど長くありません。このような状態は「軽躁」と呼ばれます。
双極性障害は、性格とかこころの問題ではなく、脳の病気だと考えられています。およそ100人に1人がかかる病気とされ、比較的若い人に発症することが多いです。先に書きましたように、躁状態はかなり派手な症状が出ますので、周囲もはっきり様子がおかしいと認識できます。一方、軽躁ではそこまで派手に症状は出ないのですが、それでも普段とは違うぞ、と周囲が気付いていることが多いものです。一方で本人にとっては「絶好調で、頭が冴え、よく動ける」くらいの認識であり、自分が病気であるとはとても思えません。このため、自覚的にしんどいと感じることの多い「うつ状態」で病院を受診する方がほとんどです。うつ状態で受診した方の16%が、うつ病ではなく双極性障害だったという報告もあります。
同じうつ状態で受診されても、「双極性障害」と「うつ病」では、選択するおくすりが全く違います。双極性障害の方に抗うつ薬を使用すると、気分が不安定になったり、場合によってはうつ状態から躁状態に移行してしまうこともあり危険です。このため、しっかりと診断して治療することが必要なのです。治療の目的は、うつ状態や躁状態を繰り返さないこと、それらに影響された生活ではなく普通の生活が送れるようにすること、です。そのために、お薬の治療だけではなく心理的なアプローチもあわせておこないます。治療を中断すると再発しやすいと言われますので、医師とよく相談してしっかり治療を続けていくことが大切です。