社交不安症(社交不安障害)
他人から注目されるかもしれない社交状況で、強く不安や恐怖を感じる疾患をいいます。
日本では、類似の病態を「対人恐怖」という名称で古くから検討されてきました。
どんな状況で起こるのか?
他人から注目される可能性のある状況と言えます。例えば、以下のような状況があげられます。
・社交的なやりとり
例)雑談すること、よく知らない人に会うこと、人と接すること、など
・見られること
例)人前で飲食すること、人前で字を書くとき、注目される、など
・他人の前でなんらかの動作をすること
例)人前で発表する、人前で電話をかける、周囲の人がいるところで用を足す、など
どんな症状がみられる?
この疾患をお持ちの方では、上記のような状況で非常に強い恐怖や不安を感じます。
その不安とともに、顔が赤くなったり、手が震えたり、汗をたくさんかいたり、また言葉に詰まってしまったり、凝視してしまうこともあります。
そして、自分がそのような振る舞いをしてしまったり、そのように見られてしまったり、不安な様子を見せたりすることで、恥をかくのではないか?他人から変に思われるんじゃないか?否定されるのじゃないか?などと恐怖を感じます。
自分の目つきがおかしいなどと感じ、そのせいで他者に迷惑をかけてしまうのではないか?そのために自分が拒絶されるのではないか?と恐れる人もいます。
手が震えることが恐怖である人は、飲酒、食事、筆記、指さしを人前でしないように避けることがあります。発汗の恐怖をもつ人は、握手や辛いものを食べないようにすることがあります。赤面することを恐怖する人は、大勢の前でパフォーマンスをしたり、明るい光や親密な関係の話題について話すことを避けるかもしれません。
この恐怖や不安は、そのような状況になった時はほとんどいつも起こるものです。
たまに緊張する、という程度ではないということですね。不安は、たとえば人前での発表を控えた人の場合は、発表当日よりずっと前から起こることがあります。
そして、できるだけそのような社交的状況を避けようとします。もし避けられない場合は、その強烈な恐怖や不安を必死に耐え忍んでいます。これらを回避といいますが、社交的状況を恐怖するためにパーティや会議を欠席したり、登校を拒否したりすることもあります。一方、スピーチの原稿の準備をしすぎたり、他人に注意をそらさせたり、視線を合わせないようにする、などの回避方法をとる方もいらっしゃいます。
これらの症状が、典型的には6ヶ月以上続くとされています。そして症状のために、日常生活や学校生活、職業上でさまざまな支障をきたしてしまいます。
例えば、登校できないので進学や卒業ができない、出勤できないので就労や就職ができない、地域との交流がうまくできないなどです。
頻度や特徴
世界の多くの地域では、0.5〜2%の方がこの疾患を有するといわれます。
典型的には10歳代半ばで発症することが多く、不登校になるなどして受診につながる場合もあります。しかし、対人交流の場面を避けながら進学したり就職したりして、大人になってから受診する方もおられます。
性格の問題などと自分で考えていたり、周囲からも病気の症状であると理解してもらえないことも多いと言われています。
この疾患の原因ですが、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れてしまっていると考えられています。また性格のせいで疾患にかかるわけではないのですが、社交不安症になりやすい性格の傾向があることもわかっています。
真面目で責任感が強い、心配性で完璧主義などの傾向が多く見られます。
治療
おくすりを用いて不安を軽減する治療があります。
SSRIという抗うつ薬や、人によっては抗不安薬、β遮断薬を使うこともあります。それに加え、認知行動療法や心理教育などの精神療法を併用します。
服薬期間などは医師の指示をよく聞いて、焦らず治療を続けると良いでしょう。